NIKKOR

HISTORY

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誰が言ったか大三元

大三元
AF Zoom NIKKOR 35-70mm F2.8S

誰が言い出したのか今になっては不明ですが、f/2.8一定の広角、標準、望遠のズーム3本をして通称「大三元」と言います。f/2.8一定ズームの始祖はマニュアル全盛の1980年代初頭に発売された80-200mm f/2.8ですが、AF時代はズームの時代と言われるように、1990年代は望遠以外の大口径ズームの開発が始まりました。まず標準ズームのAF Zoom NIKKOR35-70mm f/2.8Sが酒豪の光学設計者、稲留清隆氏により1987年に開発されました。凹の第3群固定に加え凸の第2群と凸の第4群のリンクといったシンプルな鏡筒構造、EDガラスの代わりとなる凹凸凹の3枚接合等の匠の技により好評を博しました。

初代大三元
AF Zoom NIKKOR ED 80-200mm F2.8S

翌1988年には大口径望遠ズームの大ベストセラー、AF Zoom NIKKOR ED 80-200mm f/2.8Sをリリース。マニュアルフォーカス時代の定番望遠ズーム、80-200mm f/4.5や80-200mm f/4を引き継ぐ凸先行ズームタイプです。

初代大三元
AF Zoom NIKKOR 20-35mm F2.8D (IF)

少し期間を置いた1993年、末弟であるAF Zoom NIKKOR 20-35mm f/2.8D(IF)が発売され、ここに初代大三元f/2.8ズームシリーズが完成しました。群分割IFが採用された本レンズは、IF(インナーフォーカス)でありながら、複雑なカム機構なしにズーミングによるピント移動を最小限にするとても重要なもので、以降の大口径標準・広角ズームのほとんどに採用されニコンの伝統となりました。広角側描写を向上させる大口径ガラス非球面は、ガラスを直接砥石で削る研削非球面で作られました。

超音波モーター化された第Ⅱ世代大三元への進化

第Ⅱ世代大三元のAF駆動は超音波モーターSWMになります。AF-S Zoom NIKKOR ED 17-35mm f/2.8D(IF)とAF-S Zoom Nikkor ED 28-70mm f/2.8D(IF)(共に1999年)はもちろん、どちらも凹先行ズーム。世代は変われども思想は引き継がれます。その後のNIKKORを支えることになる大口径超精密ガラスモールド非球面PGMを投入。望遠は待望のVRを搭載したAF-S VR 1 ED 70-200mm f/2.8G(IF)(2003年)と、それぞれ広角側を延長しラインナップを形成しています。

ナノクリスタルコートを搭載し飛躍的に進化した高画素対応の第Ⅲ世代

さらにその精度と形状を拡大したPGMや新時代の極低反射技術のナノクリスタルコートを採用し、デジタルカメラの超高画素時代を見越して開発した第Ⅲ世代大三元は、これがズームか?と言わしめたAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED、大口径標準ズームの目標となったAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(共に2007年)、超高性能の名をほしいままにしたAF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II(2009年)になります。全てMTFによる検査を受けて出荷されたこれら第Ⅲ世代は、デジタル一眼レフの名機D3シリーズに多数装着され数々の名シーンが撮影されました。

第Ⅲ世代大三元
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II

ダウンサイジングした小三元

また、撮像素子の高感度特性の進化に伴い明るさを欲張らずf/4としサイズダウンをした、AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR、AF-S 24-120mm f/4G ED VR、AF-S 70-200mm f/4G ED VR の3本は小三元と通称され、Fナンバーこそf/4ですが諸性能は大三元に引けを取らず、VRとナノクリスタルコートも搭載したデジタル時代の新シリーズです。

世界初全部入り11xズーム
AF-S DX NIKKOR 18-200mm f/3.5-5.6G ED VR

NIKKORは高変倍ズームには昔から取り組んできました。始まりは他社に先駆けて1985年発売の5.7xズーム35-200mm f/3.5-4.5から。世の中の趨勢がデジタル一眼レフになった2006年、それまで高倍率ズームでは鳴りを潜めていたニコンが突如としてEDレンズ、超音波モーター、手ブレ補正機構付き、ズーム比11xのAF-S DX VR Zoom-NIKKOR 18-200mm f/3.5-5.6G IF-EDを発売し、正にカメラ業界を席巻した形になりました。

そのスペックだけでなく、従来の高倍率ズームと一線を画す結像性能を有した本レンズは、企画サイドの思惑を完全に外し、月産数千台と見んでいたところが蓋を開けてみれば予約が殺到し、なんと月に4万台ものバックオーダーを抱え増産に次ぐ増産となったのは語り草です。本レンズ成功の設計的要因は、(1)効果的な非球面の使い方、(2)部分群VR、(3)実は少し大きい、の3点が挙げられます。VRレンズ群に使う非球面はレンズがシフトしても性能を劣化させないために使う独特なモノで、今では当たり前になっています。本レンズのイメージサークルはFXサイズのいわゆる35mmフルサイズより一回り(1/1.5x)小さいDXサイズなので、さらに小型化の可能性がありましたが、程良いサイズに留めることで高い性能と生産性を確保しています。この生産性の高さがあったからこそ、急な大増産にも対応できたのです。